2025/12/14 22:52

円形の画面が切り取る「冬の夜」

《冬の夜》は、円形という限定された画面の中に、日本の郊外にある冬の深夜の風景を描いた鉛筆画作品です。




俯瞰の視点から見下ろすのは駐車場と道路、電柱と電線、そして静かに停まる車たち。特別な出来事は起きていませんが、その「何も起きていない時間」そのものをテーマとし画面の中心に据えられています。

円形のフォーマットは、記憶の断片のように鑑賞者を一瞬の情景へと引き込みます。
画面の外側が切り落とされていることで、鑑賞者は自然と「この続き」を想像し、静かな没入感が生まれます。


鑑賞のポイント



— 静けさと距離感 —

この作品の見どころは、距離感のコントロールにあります。
人の姿は描かれていませんが、人の生活の痕跡が随所に残されており、不在であるはずの人間の気配がかえって強く感じられます。

・雪の残る地面の質感・街灯に照らされるアスファルトの明度差
・電柱や電線が作る緊張感のある直線
・車の白いボディが闇の中で浮かび上がる配置

これらが過度な演出なしに積み重なることで「寒さ」と同時に、どこか安心感のある夜の空気が立ち上ります。
見る距離によって、遠目からは全体の構図の静けさと、近付けば鉛筆の粒子が作る細やかな表情、その両方を楽しめる作品です。


技法の魅力

— 鉛筆と下地が生む奥行き —

使用画材は、画用紙・鉛筆・ジェッソによる下地という非常にシンプルなものですが、下地処理を施すことで、鉛筆の黒が沈みすぎず、柔らかな階調を保っています。

鉛筆特有のマットな質感は、冬の夜の空気感と非常に相性が良く、
光は強く主張せず、闇も重くなりすぎない、抑制されたトーンで全体が統一されています。

また、円形画面において重要となる「中心から周縁への視線誘導」も、明度と線の密度によって自然に設計されています。
写真のようでありながら、写真とは異なる「手で描かれた時間」が、画面に静かに蓄積されています。


購入後の展示の仕方について

直径15cm(額縁サイズ25×25cm)の小品サイズのため、
リビングの一角
・寝室
・書斎やデスク周り
など、生活動線に近い場所での展示がおすすめです。

円形作品は壁面に柔らかなリズムを生み出すため、
四角い家具や直線的な空間の中に一点加えるだけで、空間の印象が和らぎます。

目線よりやや低めに掛けると、夜の情景を「見下ろす」感覚がより自然に体験できます。
また、複数の小品と組み合わせて飾ることで、静かな物語性のある壁面構成も楽しめます。



日常の中に、静かな夜を

《冬の夜》は、強いメッセージを主張する作品ではありません。
しかし、日々の生活の中でふと目に入ったとき、
呼吸を少しだけ整えてくれるような、そんな存在になることを目指して制作しました。

冬の夜の静けさを、ぜひご自宅の空間で味わっていただければ幸いです。


「冬の夜」

https://daryu.base.shop/items/97674669


2021年制作 使用画材: 画用紙、ジェッソ、鉛筆 作品サイズ: 直径150mm 額縁サイズ:250×250mm 黄袋、かぶせ箱、アクリル板使用